
仕事にやりがいを感じているけれど、働き方に限界を感じる




将来のことを考えると、このまま特別支援学校教員を続けていいのか
不安
特別支援学校で働く教員のみなさんも、一度はこのように思ったことがあるのではないのでしょうか?
障害のある子どもたちと関わり、日々成長を間近で見れる教員の仕事は非常にやりがいを感じることのできる職業です。
しかし、多岐にわたる業務内容や保護者対応、職場の人間関係等で働き方に悩んでいる人も多くいらっしゃいます。
実際に特別支援学校教員として働く私の友達もみんな同じように悩んでいます。
そこで今回は、以下のポイントについて、現場の声をもとに詳しく解説します。
- 特別支援学校教員の仕事が辛いと感じる原因や課題
- 業務負担や人間関係のストレスへの具体的な対処法
- 教員経験を活かした転職までの道のり
この記事を読むことで、特別支援学校教員という仕事の現状を客観的に理解し、将来を見据えたより良いキャリア構築の参考になれば幸いです。
特別支援学校教員が「辛い」と感じる本当の理由
学校教員の離職率と病気休職者数の実態
文部科学省による令和4年度学校教員統計(学校教員統計調査の結果)確定値によると、各校種別の教員離職数と離職率は以下の通りです。
学校種 | 離職者数 | 在籍者数 | 離職者率 |
小学校 | 15,030人 | 416,225人 | 3.6% |
中学校 | 8,477人 | 230,074人 | 3.6% |
高等学校 | 5,601人 | 173,697人 | 3.2% |
このことから、どの学校も離職率は3%と低く、教職員は離職者が非常に少ないことが分かります。




意外に数値が低くてびっくり!
また、文部科学省による令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査についてによると、学校教員の病気休職者数は以下の通りです。
学 | 校種病気休職者数 | 在籍者数 | 休職率 |
小学校 | 4,230人 | 416,225人 | 1.02% |
中学校 | 2,106人 | 230,074人 | 0.92% |
高等学校 | 1,246人 | 173,697人 | 0.72% |
特別支援学校 | 1,246人 | 91,006人 | 1.26% |
このことから、特別支援学校教員の病気休職率が他の学校種に比べて1番高く、身体的・精神的にも厳しい労働環境にあることがわかります。




特別支援学校教員が1番休職する人が多いなんて知らなかった!
定時で帰れない?長時間労働の現状
日本教職員組合による学校現場の働き方改革に関する意識調査(2023年)によると、特別支援学校教員の勤務時間に関する結果は以下の通りです。
平均勤務時間 | 10時間10分 |
12時間以上勤務した人の比率 | 10.6% |
時間外労働をした人の比率 | 95.8% |
このことから、ほとんど全ての教員が時間外労働をし、中には12時間以上働いている人も一定数いることが分かります。
また、教員の所定労働時間は1日7時間45分であることから、平均して約2時間40分残業していると言えます。




こんなに時間外労働をしている人が多いとは衝撃!
1日のリアル日々と業務内容
実際に特別支援学校で働く友人から聞いた1日のリアルな流れと業務内容をご紹介します。
- 出勤
- その日の授業内容の確認・準備・先生との打ち合わせ
- 児童登校、スクールバス迎え
- 朝の支度・朝の会
- 午前中の授業
- 給食準備
- 給食・片付け・歯磨き
- 昼休み
- 掃除
- 午後の授業
- 下校準備・帰りの会
- 下校指導
- 職員会議・校内研修・校務分掌の仕事・保護者との連絡・次の日の授業準備等
- 退勤
特別支援学校教員は子どもたちに勉強や社会生活を教えることだけでなく、職員会議や校務分掌、保護者対応など様々な業務をこなさなければなりません。
そのため、勤務時間内に仕事が終わらず、朝早く来たり放課後遅くまで学校に残って作業したりする先生方も多いです。




やることがたくさんで大変だね!
障害特性に応じた個別支援の実態
文部科学省による特別支援教育の充実についてによると、特別支援教育を受ける児童数の割合は以下の推移しています。
特別支援教育を受ける児童生徒数 | |
平成23年度 | 28.5万人(2.3%) |
令和3年度 | 53.9万人(5.6%) |
このことから特別支援教育を必要とする児童生徒は増加しており、今後もそういった子どもたちは増えていくと考えられます。
しかし、教員数は年々減少し続けるばかりで、特別な支援を必要とする児童数に対し、教員が足りていないという厳しい現状があります。
特別支援学校教員が直面する5つの課題
多様な障害への個別対応に追われる日々
特別支援学校に在籍する児童生徒の障害種と人数は以下の通りです。(令和2年度)
障害種 | 人数 |
視覚障害 | 約5,000人 |
聴覚障害 | 約7,900人 |
知的障害 | 約133,300人 |
肢体不自由 | 約30,900人 |
病弱・身体虚弱 | 約19,200人 |
合計 | (平成22年度の約1.2倍) | 約144,800人
参考資料:(参考資料10)有識者会議参考資料
特別な支援を要する児童生徒の数は年々増加しており、障害を2つ以上併せ持っている子どもたちも特別支援学校には多数在籍しています。
このことから、特別支援学校教員は児童生徒の障害特性を深く理解し、一人ひとりのニーズに合った適切な教育内容を考えなければなりません。
そういった高い専門性を求められることが特別支援学校教員が直面する課題の一つと言えるでしょう。
保護者対応の難しさと精神的負担
教員の仕事をするうえで必要不可欠な「保護者対応」。
いろいろな子どもがいるように、保護者の中にも様々な価値観をもつ人がいます。
教師の仕事はそういった保護者とも良好な関係を築くために日頃から密なコミュニケーションを図る必要があります。
こういった保護者対応がストレスの原因となり、精神的な負担を抱える教員も多数存在しています。




実際に教員として働いていた筆者も保護者対応に日々悩んでいました
教員同士の人間関係で生まれる軋轢
特別支援学校では、学校教育法において1クラスの児童・生徒数が決まっているため、ほとんどの学校で複数担任制(T.T)で運営しています。
複数担任がいることで、より手厚い支援をすることができる一方でこんな課題に直面することもあります。
- 教育価値観や指導方針が自分と合わないときのストレス
- 上下関係で気を遣うことが多い
- 密な連携と話し合い、報・連・相が欠かせない




実際のところ、教員同士の人間関係に頭を悩まされている人はたくさんいます
休みが取れない勤務体系の問題
学校現場には労働基準法が適応されているため、授業間の10分休憩や昼休みなど休憩時間が必ず確保されています。
しかし、多くの教員はしっかりと休憩時間を取ることができていないのが現状です。
特別支援学校に在籍する児童生徒の中には、生活自立がまだ出来ていなかったり、動き回って手足が出てしまったりする子どもたちがいます。
そのため、教員は常に子どもたちから目を離さずに見守る必要があり、子どもによってはトイレや給食時など常にサポートをすることが求められ、休憩時間を確保するのが難しいのです。




私の教員時代も、はっきり言って休憩時間はほぼありませんでした。
給与待遇と労働時間のアンバランス
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、特別支援学校教諭の平均年収は以下の通りです。
特別支援学校教諭の平均年収(2023年) | |
平均年収 | 483万円 |
月給 | 34万円 |
ボーナス | 75万円 |
平均年齢 | 45.1歳 |
特別支援学校教諭の平均年収は483万円です。
令和4年の民間給与実態統計調査によると、日本の会社員の平均年収は458万円なので、特別支援学校教諭は会社員よりも年収が高いと言えます。
しかし、そこには大きな問題点があります。
給特法第3条第2項により、公立学校の教育職員については、時間外勤務手当および休日勤務手当は不支給とされているため、どんなに残業をしたとしても残業代が支払われることはありません。
その代わりに給与月額の4%が「教職調整額」という名のみなし手当として一律に支給されることになっています(給特法第3条第1項)。
しかし、長時間労働を余儀なくされている教員にとって、わずか4%ほどしか教職調整額が支給されないことは給与待遇と労働時間がほとんど合っていないと言えるでしょう。
特別支援学校に向いている人・向いていない人
特別支援学校教員に向いている人の特徴
特別支援学校教諭に向いている人の特徴
特別支援学校の児童生徒は、同じことを毎日繰り返しながらゆっくりと学習内容を理解します。
そのため、すぐ出来るようになるのを期待するのではなく、ゆっくりと待つことができる人が向いています。
時に子どもたちは、自分の感情をコントロールできなくなり、パニックを起こしてしまうこともあります。
そんな時、平常心を保って冷静に判断し、その場に合った適切な指導ができる人が向いています。
同僚の先生と密にコミュニケーションを取り、連携することは特別支援の教育現場において欠かせません。
チームワークを大切にし、報連相がきちんとできる人は特別支援教諭に向いています。
早期退職者に共通する特徴
早期退職者に共通する特徴
業務量の多さとブラックな労働環境によるモチベーションの低下により、本来の教育に対する情熱を維持するのが難しくなっている人が多いです。
心に余裕のある働き方をしたいと思い、早期退職を決意する人も少なくありません。
教職という仕事は他の職業に比べても明確なキャリアパスが少ないです。
学校という限られた組織の中だけで働いているため、保守的な風土で成長や昇進の機会も多くはありません。
そのため、長期的なキャリアを考える際に不安を覚え、早期退職を選ぶ人も増えつつあります。
「やめとけ」と言われる理由と真意
特別支援学校教諭は「やめとけ」と言われる主な理由は以下の通りです。
- 求められる教育の専門性の高さ
- 仕事量と給料が見合ってない
- 保護者対応が大変
- 教員同士の人間関係構築の大変さ
- キャリアパスの狭さ
- 体力面の限界
このような大変な面もありますが、それ以上に子どもたちと関わる楽しさや喜び、やりがいも大きいです。
結局のところ、特別支援学校教諭の仕事を「やめとけ」と思うか思わないかは、仕事のプラス面とマイナス面を経験してから自分が決めることだと思います。
現役教員が語る赤裸々な本音
特別支援学校教諭として実際に働いている私の友人の声を紹介します。
障がいをもつ子どもたちと毎日関わるのはやりがいもあって、楽しい!
この仕事が好き。
子どもたちが素直で本当に可愛い!
同じクラスの先生と相性が良かったら最高に楽しい仕事!合わなかったら、その1年間最悪だし、ものすごくストレスが溜まる。
どんな時も自分の子どもファーストな親がいて、対応が大変
この先、家庭と育児と仕事の両立を考えると、自分にできるかどうかすごく不安
このような感じで、特別支援学校教諭には良い面もあれば悪い面もあって、その人によって働いている本音はバラバラです。
共通して言えるのは、「仕事自体は楽しいけど、この先どうなるのか不安な思いはある」ということです。
特別支援学校で働き続けるためにすべきこと
業務の効率化と時間管理の具体策
日頃の業務効率を向上させたり時間を有効活用できたりする具体的な仕事術をいくつか紹介します。
- 自教室や教卓、机の上の整理整頓の徹底
- 仕事に優先順位をつけて、Todoリストを作成する
- カウントダウンタイマーを使い、仕事の時間を計る
- 児童生徒の良かったところを日頃からメモしておき、所見の材料集めをしておく
- スケジュール管理をし、仕事の見通しを持つ




筆者も教員時代、Todoリストの作成と机上整理を徹底的に行い、残業時間を月30時間減らすことに成功しました!
保護者対応のコツと注意点
保護者と良好な関係を築くことは教員の仕事にとって欠かせません。では一体どのように保護者と関わればよいのでしょうか?そのコツと注意点を紹介します。
保護者対応のコツ
- 保護者の話を最後まで聞く
- 保護者の話に共感する
- 学校として今後どういう対応を取るのか「これからのこと」を伝える
- 子どもの「良かったこと」電話をする
- 日頃から連絡帳などで子どもの頑張りを褒める
保護者対応の注意点
- 自分の考えを押し付ける
- 連絡をおろそかにする
- 社会人としてのマナーがなっていない




保護者の話や子どもの様子を日頃から聞いたり伝えたりすることが大切だね!
メンタルヘルスの保ち方
教員の仕事はストレスを抱えやすいため、メンタルが不調になる人が多いです。心の健康を保つためにできることを紹介します。
- 長時間労働を改善する
- 自分以外にもできる仕事は分担して行う
- 気分転換になる趣味や運動をする
- 相談できる人を見つける




適度にリフレッシュをしてメンタルを保ちましょう!
管理職への相談の仕方
何か仕事で困ったときは、管理職に相談することが必要です。ここでは、管理職の相談の仕方についてご紹介します。
- 相談したいことや悩んでいることを明確にする
- 「○○について相談させていただきたいのですが、お時間ありますか?」とアポを取る
- 実際に管理職に相談する




管理職は忙しいので、相談内容をはっきりさせてからアポ取りを
しましょう!
ワークライフバランスを保つコツ
「仕事も大切だけど、プライベートの時間もしっかり確保したい」と思う人に向けて、ワークライフバランスを保つコツを教えます。
- 帰宅時間を先に決め、逆算して仕事内容を考える
- 仕事の優先順位を考え、「時間」を意識しながら働く
- 帰宅後の予定を先に決めておく
- 授業中にできることは終わらせておく(丸付けや宿題チェックなど)




教員時代、これらのことを意識して仕事をした結果、ワークライフバランスが保てるようになりました!
特別支援学校教員をやめたいと思ったら
転職を決意するタイミングの見極め方
教員を辞めて転職をしようか迷っている人に向けて、転職を決意するタイミングの見極め方をご紹介します。
ライフステージによる変化
結婚や出産、育児との両立がきっかけで働き方を見直し、転職を決意する人はたくさんいます。
特別支援学校教諭のメリット・デメリットを洗い出し、より理想の生活が送れる職業を探していくとよいでしょう。
新しく挑戦したいことができた
教員の仕事以外で「これをやってみたい!」と新たに挑戦したいことが出てくる人もいます。
または、自分をレベルアップさせて、教員以外の仕事も経験してみたいと思う人もいるでしょう。
人生は1度きり。教員以外の道へ新たな一歩を踏み出していきましょう。
心身ともに疲弊している
長時間労働やストレスなどで体調を崩してしまっている人は、一度働き方を見直し、環境を変えてみるのはどうでしょうか。
教員以外の働き方を知り、心と体の健康を保てるような仕事を見つけていきましょう。
教員経験を活かせる具体的な転職先
ここでは特別支援学校教員経験を活かせる具体的な転職先を紹介します。
- 放課後等デイサービス
- 家庭教師・学習塾
- 介護職
- 障がい者福祉職
- 地方公務員
- 営業職
- 教材制作会社




教員免許が活かせる職業は探せば意外と見つかります!
転職エージェントの選び方と活用法
「転職したい!」と思っても周りに相談する人がいなくて、どうすればいいか悩んでいる人におススメなのが「転職エージェント」です。
転職エージェントとは「無料で転職活動をサポートしてくれるサービス」のことです。
ここでは転職エージェントの選び方と活用法について紹介していきます。
転職エージェントの選び方
①複数の転職エージェントサービスに登録する
②自分と相性の良いアドバイザーを見つける
③もっとも相性の良い1社に絞り込んでいく






転職エージェントの活用法
・「転職の軸」を明確にして積極的に相談する
・応募書類(履歴書・職務経歴書)の添削をしてもらう
・面接対策をしてもらう



まとめ
今回は特別支援学校教員の仕事が辛さやその対処法、転職までの道のりをご紹介しました。
特別支援学校教員はやりがいや楽しさもある反面、大変なことも多い職業です。
特別支援学校教員の仕事を続けるか迷っている人は、ぜひ本記事を見返して、理想のキャリアプランを描く上での参考にしてみてください。